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認知症について

「認知症」とは?

 認知症とは「正常であった脳の知的な働きが低下し、日常生活に支障を生じた状態」をいいます。加齢により、もの忘れは多くなってきますが、これは脳の老化の一つで自然現象です。しかし、「認知症」になると体験や出来事の記憶すべてを失ってしまったり、忘れていることすら忘れてしまうことがあります。これは単なるもの忘れではなく、れっきとした脳の病気です。

「もの忘れ」と「認知症」の違い

もの忘れ 認知症
原因 加齢により生じる 病気により生じる
もの忘れの自覚 あり ないことが多い
記憶障害 体験の一部を忘れる
何を食べたのか忘れる
体験そのものを忘れる
ご飯を食べたことを忘れる
生活への障害 なし あり
もの取られ妄想 なし 伴うことがある

認知症かどうかのポイント

  • 記憶力の低下で忘れっぽくなる。
  • 認知機能障害で、人・場所・時間などの見当がつかなくなる。
  • 今までの生活を続けることが難しくなる。

※認知症の症状は本人よりも周囲の人(家族など)が気づくことが多いです。以前と何かが違う・その人らしさがなくなった・出来なくなったことがあるなど、小さな気づきが早期発見の手掛かりとなります。

認知症の種類

認知症の原因となる病気には、大きく分けて「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」があります。
日本では「アルツハイマー型認知症」が大部分を占めています。

アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症疾患の中で最も多くすべての認知症の約半数を占めます。脳にアミロイドβというたんぱく質が神経細胞に異常沈殿し健全な神経細胞が減少していくことで脳の働きの低下や脳の萎縮を進行させると考えられています。
発症や進行が緩やかなのが特徴で、いつの間にか始まり、だんだんと「記憶障害(もの忘れ)」、「見当識障害(時間、場所、人の見当がつかなくなるといった症状)」が進行していきます。70歳以降の高齢者に多く、ほとんどがもの忘れで発症します。
病気の症状を改善したり、進行を遅らせる効果が期待できる治療薬はありますが、病気の進行を完全に止めることはできません。
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症疾患で、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破裂したり(脳出血)して、脳に十分な血液が送れなくなり、神経細胞が死滅することで発症する認知症です。そのため、脳の場所や障害の程度によって、症状が異なり、できることとできないことが比較的はっきりとわかれていることが多く、もの忘れが激しくても判断力や理解力はしっかりしていたり、日によって出来ることと出来ないことがあったりというように、その症状にばらつきがあります。また、脳血管性認知症の症状としては、手足の麻痺などの神経症状が起きることもあります。
徐々に症状が進行するアルツハイマー型認知症と異なり、段階的に症状が進行していくのが特徴です。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病や心臓病をきちんと治療し、喫煙や過度の飲酒を控えるなど規則正しい生活を送ることにより発症や進行の予防が可能な認知症です。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症とは、レビー小体という神経細胞に出来る特殊なたんぱく質が、脳の大脳皮質(人がものを考える時の中枢的な役割を持っている場所)や、脳幹(呼吸や血液の循環に携わる人が生きる上で重要な場所)にたくさん集まってしまうことで、神経細胞が壊れて減少し、神経伝達が上手くできなくなり、認知症の症状が起こります。
症状としては、幻視(本来存在しないものが見える)や妄想、調子の波が大きい事、手足の震えや歩行障害などのパーキンソン症状を特徴とします。その他、立ちくらみや便秘など自律神経障害、失神、うつ病を伴うこともあります。このような多彩な症状が認められるため、治療やケアにとても注意が必要です。
すべての認知症の10~15%を占めます。
前頭側頭型認知症(FTD)
前頭側頭型認知症とは、主に大脳の前頭葉と側頭葉の委縮が目立つ脳疾患で、若年性認知症など若い人でも発症する認知症です。多くは65歳より以前の初老期に発症し、物を考える中枢的な役割を持つ前頭葉と言葉の理解や記憶、聴覚や嗅覚も司る側頭葉が影響を受けるため、性格変化や行動異常が目立つ認知症です。
もの忘れといった認知症の症状ではないので、単に性格が変わっただけと思われて、病気の発見が遅れがちになります。病気の始まりから終わりまで、この性格変化と行動異常はほかの症状よりも目立ちます。

※その他、「若年性認知症」「アルコール性認知症」「正常圧水頭症」など様々な種類がありますので、不安な事や疑問などがありましたら、まず認知症疾患医療センターご相談ください。 ⇒ご相談はこちら

認知症の症状

認知症の症状は「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」にわけられます。

中核症状とは?

中核症状とは、一般的に認知症の方に必ず現れる症状をいいます。

(症状)見当識障害・実効性機能障害(判断力の障害)・失語・失認・先行・記憶障害

周辺症状(BPSD)とは?

中核症状の記憶障害・見当識障害・実行機能障害などから二次的に起こる症状をいいます。必ずしも認知症状のある全ての人に出現するわけではなく、家族など周囲の対応といった環境要因が大きく作用します。
「興味をもって接する」・「訴えを否定せず受け入れる」・「何を訴えたいのか?(傾聴)」というように、認知症だからしょうがないではなく、その人らしく健康な生活をおくれるよう、相手を理解しようとする姿勢によって、周辺症状の出現が左右されます。

軽度認知障害(MCI)

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)とは、健常者と認知症の中間段階にあたるいわばグレーゾーンを指します。認知機能のうち1つの機能に問題が生じてはいるものの、日常生活には支障がない状態のことです。MCI の判断基準は、まだしっかりと確率されていませんが、おおむねの判断基準としては以下の5項目があげられます。

  1. 記憶障害の訴えが本人または家族からある
  2. 日常生活の動作は正常に行える
  3. 全般的な認知機能はおおむね正常
  4. 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害がある
  5. 認知症ではない

これらの全てに当てはまったときは、注意が必要です。
MCIを放置すると、認知機能の低下が続き、5年間で約50%の人が認知症へと進行すると言われています。MCIは適切な治療・予防をすることで回復したり、発症が遅延したりすることがあります。早期にMCIに気づき、認知機能低下に対する適切な対策を行う事で認知症の症状が最後まで出ずにすむケースもあります。
少しでも気になる場合には、セルフチェックだけではなく、当院にご相談ください。

認知症チェック~こんな症状はありませんか?~

□探しものばかりしている
□食事の用意ができない
□元気がない
□部屋の中が汚い
□外出する回数が減った
□買い物に行くといつも同じ物を買ってくる
□すぐ忘れてしまい何度も同じことを聞く・話す
□最近のことは忘れてしまい、昔のことしか話さなくなった
□料理手順が分からなくなり、今までと味付けが変わった

□電化製品(炊飯器・洗濯機など)の使い方が
 分からなくなった
□曜日・時間が分からない
□状況の変化についていけない
□季節にあった洋服選びが出来ず、いつも同じ服
□怒りっぽくなった
□黙ってテレビばかり見ている
□人名などを思い出せない

※チェックが多い方は認知症予防を取り入れるなど、生活改善に心掛けましょう。気になる方は、認知症疾患医療センターにご相談ください。 ⇒ご相談はこちら